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治具の種類と製作工程

 

はじめに

治具とは?

治具(冶具)は当て字。工作物を固定するとともに切削工具などの制御、案内をする装置。おもに機械加工、溶接などに用いる。これによっていちいちけがきする手間がはぶけ、加工が容易になり、仕上がり寸法が統一されるので作業能率を増し、大量生産に適する。 —日刊工業新聞社刊「機械用語辞典」 これ以外に治具という言葉は色々な分野で使われている。例えば鍍金業における薬液に漬けるための器具、熱処理業においても焼きむらを防ぐための器具、化成品を組み立てるための木型等があげられる。しかし一番よく意味するところは、辞典にあるように『金属を削るときに必要とされる装置』である。 —フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

  一言で「治具」と言っても裾野が広い製造業では各業種毎に幅広く、多種多様な「治具」が存在します。 治具には様々な材質、形状、使用用途があり、製造現場や開発工程での作業効率を上げてくれます。今皆さんの目の前にある数々の製品を作るために、たくさんの治具が使用されています。 ここでは治具の種類、設計~製造までのステップ毎の勘所を説明していきます。  

治具の種類

治具の種類は…無限大にあります。最終製品の設計~検査工程まで様々な種類の治具が使用されますが、ここでは代表的な3種類の治具を記載します。  

加工治具

ワークを固定または、載せた状態にするための治具です。場合によってはクランプなどで固定し大量生産を効率的に行うために使用されます。また、工作機械(マシニングセンタなど)加工での段取りの簡素化、工数の削減目的でも使用されます。  

検査・測定用治具

主にプレス品、成形品の測定治具が代表的です。特に、自動車業界部品では大量生産する部品でかつ自由形状のような複雑な部品を効率的に測定する際に使用します。持ち運び、操作性の優れたアルミや、ケミカルウッドで製造されます。  

組立治具

製品の組み立ての際に用いる治具です。加工済の各部品を位置決めされた治具に正しく設置し、組み立てを効率よく行うために使用されます。製品の意匠を保護する目的でPOM樹脂などのエンジニアリングプラスチックを使用する治具もあります。  

必要な工程は?

治具ができるまで

大まかな工程は以下のような図となります。 各工程ごとを細分化し説明していきたいと思います。  

設計

どんな治具でも[作業効率の向上][安定した品質][製造原価]を意識した設計が基本です。ここで躓くと後工程において遅れや品質基準の未達成など多大な影響があります。  

Point

不要な寸法公差、精度公差は設定しない!

  設計において、図面指示では複数の公差指示が存在します。組立が必要な複数の部品から成る治具であれば必ず公差が必要になります。ただ、ごく稀ではありますが、その公差本当に必要?と思われる図面を目にすることがあります。例えば公差1000分台を要求する場合、加工難易度が高くなるため、コストが割高になり、製造原価にも反映されます。製造原価を抑える意味でも不要な寸法公差、精度公差は設定しないようにしましょう。  

材料

図面通りの材料を、地場の商社や材料メーカーから調達します。馴染みの仕入先であれば都合もつけやすく[価格][品質][納期]も同意しているため、都度の調整も楽に行われます。  

Point

材料の調達パターンを理解し、製造原価の低減に繋げる

  材料調達には大きく分けて2パターンあります。黒皮材(ミルスケール)といって熱間圧延されたままの材料や、6F材といって6面体をフライスで[平行度][直角度][平面度]を基準内で加工した材料があります。6F材では材料が到着次第、すぐに加工に取り掛かることができますが、黒皮材では6面体をフライスで加工する必要があります。最近では材料メーカーも2次加工に力をいれています。材料を納品するだけでなく、加工まで一貫しておこなう事が増えてきているようです。製造原価の低減は設備状況やヒトにより様々となるので工場に合った調達が必要になります。  

切削加工

切削加工とは専用のマシニングセンター(工作機械)により刃物(工具)を用いて材料を削り、寸法通りの形状に加工する事を言います。  

Point

部品の特性を把握し、瞬時に加工法を判断する

  [ワーク(材料)サイズ][精度][形状]など図面には様々な情報が記載されています。 図面には厳しい公差指定があり、緩和要求や、形状変更依頼を出すなど日常茶飯事です。上記の要求事項を満たすには加工法にあった自社内の設備だけでなく、自社外の設備を把握しておく必要がありますし、部品の特性を把握する事により、エキスパートとしての顧客提案ができるようになり、顧客価値の創出にも繋がります。   ここでは切削加工だけに焦点を当てましたが、工法は多岐に渡ります。部品に即した加工が必要になりますので、別の記事で解説します。  

表面処理

どんな環境下で使用するか、意匠性など諸条件により決定します。主に強度、耐摩耗性、絶縁性、装飾性などを向上する事を目的とした処理です。  

Point

表面処理がもたらす恩恵とは

  表面処理とは部品に対して補助的技術の一つであるが、母材の性能を更に高めたり、機構的に一つの条件に特化した部品の製作が可能となる素晴らしい技術です。特に治具や治具部品は繰り返し使用する事で消耗します。表面処理加工をする事により、治具の寿命を伸ばす事ができ、メンテナンスや交換の必要が無くなります。  

製品

まとめ

以上のさまざまな工程を経て初めて製品が完成します。(結構省略しましたが…)   治具装置、治具部品といえども様々な設備や企業が関わります。それぞれの企業が各工程毎の強みを活かし図面通りのものを製作していきますが、共通するのは[作業効率の向上][安定した品質][製造原価]を意識した設計の思惑を汲み完成させるという事です。  

 

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