【研磨】電解研磨とは
研磨には多くの種類がありますが、電気の力を使った研磨方法である「電解研磨」も研磨方法の一種です。
電解研磨の仕組みやメリットについて紹介します。
電解研磨とは
電解研磨は、電気分解の原理を利用した研磨方法です。研磨対象となる工作物を電解研磨液に浸し、そこに電流を流して工作物の表面を溶かすことで研磨します。
物理的な研磨方法に比べて微細なキズなどを取り除くため平滑度が高く、又耐腐食性も得られるという特徴があります。
電解研磨の方法
電解研磨は電気分解を利用すると説明しました。電気分解とは、電解質溶液に電流を流して酸化還元反応が発生し、化学的に分解反応をおこします。
電解研磨では、研磨したい工作物にプラスの電極を繋ぎ電解研磨液に入れます。同時にマイナス側の電極を繋いだ板も電解研磨液に入れてそこに電流を流します。
電流が流れた事により、電気分解反応が起こりプラス側につないだ工作物に溶解反応が起こります。その際、溶解反応は電解質溶液に触れている面が大きい工作物の凹凸部分が先に溶解することで平滑化され研磨される仕組みとなっています。
電解研磨のメリット・デメリット
バフ研磨などの物理的な研磨と違い電気分解で溶かすという方式の電気研磨のメリットとデメリットはどのようなものがあるのでしょうか?
電解研磨のメリット
電気研磨のメリットには以下のようなものがあります。
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細かいキズなどを除去できる
物理的な研磨では、一見するとキズ一つないきれいな表面に見えますが、どうしても目に見えない細かいキズがついてしまいます。電気研磨は平滑度が高く、目に見えないキズも物理的な研磨より除去能力が高くなります。 - 熱膨張がない
物理的な研磨では、研磨面が摩擦により高温化します。これにより摩擦面が熱膨張し変形する恐れがあります。他にも熱による悪影響がありますが、電解研磨では摩擦が起こらないため熱による悪影響を避けることができます。 - 平滑度が高い
物理的な研磨では対応できない微細なバリや凹凸に関しても、電解研磨による研磨は平滑度が高く、微細なバリや凹凸を除去することが可能になっています。 - 耐食度が高い
電解研磨を行う際、表面に不動態被膜というものが発生します。不動態被膜は、金属を腐食から守る性質があり、これにより研磨した工作物は耐食性に優れています。 - 研磨で汚れがつきにくい
電解研磨は表面を溶かして研磨する方式なので、研磨により表面についた汚れも除去できます。そして、平滑度が他の研磨方法より優れているために汚れもつきにくくなっています。
電解研磨のデメリット
電解研磨によるデメリットは以下のようなものがあります。
- 電気を通さない工作物には使用できない
電解研磨は電気分解を利用した研磨方法です。そのため、金属などの研磨にはよく利用されますが、それ以外の電気を通さない物は原理的に研磨することが出来ず研磨できる物が限られています。 - 均一に研磨するのに技術や環境対策が必要
電解研磨をするためには、研磨する工作物と対極側の設置場所をしっかり考える必要があります。適当に工作物と対極側を設置して通電をすると、均一な研磨結果が得られず品質の低い研磨となってしまいます。均一な研磨をするためには、考察物の形状なども考えて研磨をしないといけません。
また研磨に使う溶液の管理も重要で、これらの扱いも適切でないと研磨の品質が保てないことや、廃棄する際も下水などに流すと公害などを引き起こす可能性があるため、廃液を処理する装置を用意するか廃液処理業者に依頼する必要があります。
このため、電解研磨を行うためには技術やしっかりとした環境対策が必須となります。