SS400(一般構造用圧延鋼材)
SS400は、SS材(一般構造用圧延鋼材)の中でも流通量が多く、代表的な材料です。 一般構造用圧延鋼材の材料記号は「SS(Structural Steel)」で表されSS材とも呼ばれており、数字は最低引張強さを表しています。 古い図面などで今でも目にすることがありますが、1994年のJIS改正前には、SS41と呼ばれていました。 JISではSS400は規定されていますが、ISOでの規定については未だ議論中のため、まだ規定がありません。
SS400の特徴
溶接性については通常は特に問題ありませんが、大きな応力を受けるような構造や厚み(25mm~)のある溶接では、SM材(溶接構造用圧延鋼材)のような溶接に適した鋼材を用います。 炭素量に関してはJIS規格では特に規定はありませんが、約0.15から0.2%前後の炭素量が含まれている低炭素鋼(軟鋼)といえます。 また、熱処理にて強度(硬度)を高めるには、おおむね0.3%以上の炭素量が必要ですが、SS400は炭素量が低いため熱処理での強度(硬度)を高めることが出来ない鉄鋼材です。 反面、熱が原因による材料強度(硬度)の変化等を考える必要が無い分、扱いやすい鋼材でもあります。 また、比重は7.85です。
SS400の用途
SS400は建築などでも使用される一般的な鉄板です。安価で強度が高く、ミルシート(鋼材証明)が出るため、大型機械や強度の必要な部品に使われることが多いです。 鋼材としても板材、棒材ともに種類が豊富で入手しやすく、断面の形状によって曲げに強い「H形鋼」、「T形鋼」、H形鋼より耐荷重性を増した「I形鋼(Iビーム・ジョイスト・ジョストン)」、L字型断面の「山形鋼(アングル)」、U字型断面の「溝形鋼(チャンネル)」などと呼ばれ、形鋼としても流通しています。 断面形状によって用途が異なる点も特徴の一つです。 構造用以外の用途としては、機械設備、橋、船舶、車両など多くの分野で使用されています。 平鋼(フラットバー)ですと、良くブラケットやプレートで使用されています。
SS400の化学成分
成分規格 | |||||
---|---|---|---|---|---|
C | Si | Mn | P | S | Ceq |
– | – | – | ≦ 0.05 | ≦ 0.05 | – |
※JIS G 3101より抜粋 SS400は引張強さの規格なのでリンと硫黄のみ規定されており、炭素量の規定はなく自由度が高い反面、信頼性が必要な用途には注意が必要です。 炭素量は一般的には0.15〜0.2%程度の場合が多くなっています。
SS400の物理的性質
融点 | 密度 (g/cm³) | ヤング率 (縦弾性係数) | 剛性率 (横弾性係数) | ポアソン比 | 線膨張率 (ppm/K) | 定圧比熱 (J/kg・K) | 熱伝導率 (W/m・K) | 熱拡散率 (mm²/s) | 熱応力 (MPa/K) | |
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GPa | N/mm² | GPa | ||||||||
約1,580℃ | 7.85 | 206 | 2.1E+05 | 79 | 0.3 | 11.8 | 473 | 51.6 | 13.9 | 2.41 |
剛性率は他にも、「ずれ弾性係数(ずれ弾性率)」「せん断弾性係数(せん断弾性率)」「ラメの第二定数」と呼ばれます。
SS400の機械的性質
SS400の「SS」とはSteel Structure(構造用鋼)を意味し、「400」は、SS材で保証されなくてはならない最低(下限)の引張り強さをN/mm2(MPa)で表したものになります。 SS400の引張強さは400~510N/mm2なので、最低(下限)の400が引張強さを示しています。
降伏点または耐力(N/mm²) | 引張強さ(N/mm²) | |||
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鋼材の厚さ(mm) | ||||
16以下 | 16を超え40以下 | 40を超え100以下 | 100を超えるもの | |
≧245 | ≧235 | ≧215 | ≧205 | 400~510 |
鋼材の厚さ(mm) | 引張試験片 | 伸び(%) | 曲げ性 (曲げ角度180°) | |
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内側半径 | 試験片 | |||
鋼板、鋼帯、平鋼の厚さ5以下 | 5号 | ≧21 | 厚さの1.5倍 | 1号 |
鋼板、鋼帯、平鋼の厚さ5を超え16以下 | 1A号 | ≧17 | ||
鋼板、鋼帯、平鋼の厚さ16を超え50以下 | 1A号 | ≧21 | ||
鋼板、鋼帯、平鋼の厚さ40を超えるもの | 4号 | ≧23 | ||
棒鋼の径、辺又は対辺距離25以下 | 2号 | ≧20 | ||
棒鋼の径、辺又は対辺距離25を超えるもの | 14A号 | ≧22 | 径、辺又は対辺距離の1.5倍 | 2号 |
※JIS G3101より抜粋
上記表にもあるように、SS400の機械的性質上、引張強さよりも、板厚に関係する降伏点(耐力)の方が重視されます。板厚が厚くなれば降伏点が下がってしまう、つまり厚くなるほど弱い力で変形し、もとに戻らなくなってしまうので強度計算を行う際には注意が必要です。
SS400の鋼材
SS400の標準寸法は、形状毎にJIS規格で定められています。 一般的にSS400鋼板は売られている素材の単位が、3×6(サブロク)と呼ばれる「914mm×1829mm」や、4×8(シハチ)と呼ばれる「1219mm×2438mm」などのサイズになります。 独特な呼び方に見えますが、サブロクやシハチ、ゴットウはフィートを単位とした際の呼び方です。
形状 | JIS番号 | 名称 |
---|---|---|
棒鋼 | JIS G3191 | 熱間圧延棒鋼及びバーインコイルの形状、寸法、質量及びその許容差 |
形鋼 | JIS G3192 | 熱間圧延形鋼の形状、寸法、質量及びその許容差 |
鋼板及び鋼帯 | JIS G3193 | 熱間圧延鋼板及び鋼帯の形状,寸法,質量及びその許容差 |
平鋼 | JIS G3194 | 熱間圧延平鋼の形状,寸法,質量及びその許容差 |
圧延鋼材
圧延鋼材には、熱間圧延鋼材(黒皮材)と冷間圧延鋼材(ミガキ材)があります。 熱間圧延材は黒皮材とも呼ばれ、溶鉱炉からそのまま作られるため、鋼材の表面に黒色の酸化鉄の皮膜を残した状態のまま(黒皮)の鋼材のことです。 酸化により凹凸のある面に仕上がるため、寸法精度が必要な場合や見た目が重要視される用途には不向きな鋼材ですが、価格が安い点が特徴です。 また、黒皮材の板の端にはダレがあり、板厚が薄くなっているので注意が必要です。 黒皮材の酸化皮膜を塩酸に浸して化学的に取り除いた材料は酸洗材と呼ばれ、SS400で酸洗すると「SS400-P」になります。 肌が綺麗で加工性に優れ(塗油によりプレス加工機への負担軽減)、溶接・塗装が容易な上冷間圧延鋼材よりも安価となる反面、酸化皮膜を取り除いてしまうことで錆が発生しやすくなるため、錆防止用に塗油が入ります。ミルシートに「oiled」と記載があるのは、この塗油によるものです。 冷間圧延鋼材はミガキ材とも呼ばれ、黒皮材を二次加工し厳格に寸法規格を揃え、磨かれたかのような綺麗な表面をした鋼材のことです。こちらは表面に黒皮(黒錆)がない点が特徴ですが、価格が高くなってしまうのが難点です。
材料形状
材料形状も様々ありますので、用途によって使い分けることが出来ます。 例えば平鋼(フラットバー)ですと幅x厚みで表現されますので、図面では「FB65x9」のように記載されたりします。 希望に合う寸法がない場合や加工工程を省略したい場合は、それぞれの面をフライス加工した「2F」「4F」「6F」プレートを使用することも可能です。 下記に良くある形状をご紹介します。
- 丸棒(丸鋼・ラウンドバー)
- ミガキ丸棒(丸鋼・ラウンドバー)
- 角鋼(角材・スクエアバー)
- 四角棒
- ミガキ四角棒
- 四角鋼
- ミガキ四角鋼
- 平角棒
- ミガキ平角棒
- 平鋼(フラットバー)
- ミガキ平鋼(フラットバー)
- 六角棒
- ミガキ六角棒
- 溝形鋼(チャンネル)
- 等辺山形鋼(アングル)
- 不等辺山形鋼(アングル)
SS400の表面処理
SS400で良く使用される表面処理を下記にご紹介します。
-
- 四三酸化鉄被膜(黒染め):塗装下地として良く使用される
- パーカー(パーカーライジング):黒染めより防錆・耐摩耗性に優れる
- ユニクロ(白色):亜鉛めっきの後処理として使用される
- 有色クロメート(黄色・黒色):亜鉛めっきの後処理として使用される
- 三価クロメート:六価クロムを含有していない
- 無電解ニッケルめっき:防食性・耐摩耗性・密着性に優れる
SS400の規格対照表
JIS規格以外の規格との対照表については下記の通りです。 明確に同一材料は少なく相当材のため、用途に合った材料を選ぶことが肝要です。
ASTM | DIN & VDEh | BS EN | ISO |
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A36 A283 Gr.D | DIN17100U RSt42-1 | BS EN 10025 GR.S275JR | ISO R630 Fe42A 44A |
※機械的性質は、使用する機械、ビルド条件や測定条件によって異なることがあります。 ※注意:上記のデータは指定の材料、装置、パラメータセットを所定の試験手順によって測定されているものであり、この材料を使用して得られる全ての部品等について保証するものではありません。