【溶接】ガス溶接とは
ガス溶接とは、ガスが燃焼する時に発する熱を用いて金属を溶かして接合する方法のことです。
この記事ではガス溶接とは何か、ガス溶接のメリットとデメリットの検証、ガス溶接に必要な技能について解説します。
ガス溶接とは
ガス溶接は、アセチレンやLPGなどの可燃性ガスと酸素を用いて、2つ以上の金属を溶かして接合する溶接作業の一種です。自動車の修理など、さまざまな用途で使用されている汎用性の高い溶接です。また、ガスを用いて溶断作業にも使用することができ、こちらは「ガス切断」と呼ばれています。
仕組みとしては、基本的に2つの素材を溶かして、その間に強力な結合を作り出すことです。接合する2つの部品は、可燃性ガスと酸素を組み合わせたものを燃焼室に噴射するトーチと呼ばれる道具を使って加熱します。加熱された可燃性ガスと酸素から熱が発生し、その熱で金属を溶かして結合させます。
ガス溶接での溶接は、ガスの量の調整により溶接作業が非常に制御しやすく、溶接のスピード、熱量、溶け込み具合を正確に判断することができます。また、アーク溶接のように火花が散ることがないため作業状態を確認しやすく、薄い素材や複雑なデザインのもの、また厚みのある素材の接合に適しています。
通常、鉄などの金属に使用されますが、アルミニウムやその他の素材にも使用できます。溶接工程の中ではコストパフォーマンスが高く、さまざまな場所で利用されています。
可燃性ガスと酸素を用いる作業の性質から大変危険な作業方法であり、ガス溶接作業を行う作業員は、労働安全衛生法 第61条ー1より政令第20条10号で定められた「ガス溶接技能講習」を講習し、その過程を修了する必要があります。
ガス溶接のメリットとデメリット
ガス溶接のメリットとデメリットは以下の通りとなります。
ガス溶接のメリット
接合部の確認がしやすい
ガス溶接と共に代表的な溶接である「アーク溶接」と比べ、ガス溶接では火花が発生しないために、作業中に溶接部の確認が容易となっています。溶接状況を確認しながら作業ができるために、溶接ミスが少なくなります。
ガス量で熱量調整が容易
薄い金属板や融点の低い金属などを接合する場合、あまり高い温度で溶接を行うと割れや溶接ミスが発生します。ガス溶接は、ガスの量で熱量調整が容易にできるため、薄い金属などの溶接にも向いています。
導入コストが比較的安価
ガス溶接に必要な設備は比較的小型で、必要な設備もあまり多くありません。そのため、導入するためのコストが比較的安価となり、負担がありません。
電気がなくても溶接可能
ガス溶接は、ガスボンベがあれば場所を選ばず作業可能な溶接方法です。アーク溶接のように電気を使わないので、電源がない場所でも作業できることが強みとなっています。
ガス溶接のデメリット
溶接に時間がかかる
ガス溶接は、加熱にかかる時間が長く、溶接するための温度が低くなっています。(アセチレン溶接で約3000℃)そのため、作業時間がかかるのがデメリットとなります。
ピンポイントで溶接できない
ガス溶接は、熱で溶接する範囲がアーク溶接などに比べて広く、ピンポイントに溶接したい場所だけを溶接することが難しくなっています。溶接したい場所以外も加熱してしまうため、周囲にひずみがでてしまう可能性があります。
ガス溶接技能者について
ガス溶接は可燃性ガスを使用するため、大変危険な作業となっています。作業に従事する作業者は「ガス溶接技能者」という国家資格を持つ必要があります。この資格を持たずに作業することは、法令違反となります。
ガス溶接技能者取得方法
ガス溶接技能者を取得するためには、2日間の学科講習と実技講習を受ける必要があります。
それぞれの内容は以下の通りです。
学科講習
- ガス溶接等の業務のために使用する設備の構造及び取扱いの方法に関する知識
- ガス溶接等の業務のために使用する可燃性ガス及び酸素に関する知識
- 関係法令
実技教習
- ガス溶接等の業務のために使用する設備の取扱い
講習を受けられる機関としては、職業能力開発校などの職業訓練施設や、建材メーカーの教習所などが挙げられます。
ガス溶接作業主任者
ガス溶接作業を行う作業員のための資格の他に、ガス溶接の現場責任者のための資格として「ガス溶接作業主任者」があります。
ガス溶接作業主任者は、可燃性ガス1本と酸素ボンベ1本のみを使用して溶接する小規模な現場では専任の必要がありませんが、アセチレン溶接装置やガス集合溶接装置などを使用して溶接作業を行う場合には専任する必要があります。
ガス溶接作業主任者の資格を取得するには、学科試験に合格する他に、ガス溶接技能講習を修了してから3年以上の実務経験や大学又は高専において溶接に関する学科を修了するなどの条件が必要となります。大規模なガス溶接環境が必要な場合、必須の技能となります。