【射出成形】プラスチック成形の基本「射出成形」とは何か
目次
射出成形はプラスチック成形方法のひとつで、熱で溶かしたプラスチックを金型に流し込んで、固める成形方法です。一度、金型を製作してしまえば、同じものを大量生産できる点が最大のメリットといえます。今回は射出成形の特徴、完成品ができるまでの工程を解説します。
射出成形とは
「射出成形」とは金型を用いてプラスチックを成形する方法の1つです。溶かしたプラスチックを注射器 (ノズル)を通して、金型に流し込むことから、射出成形とよばれています。200℃前後の高温でプラスチックを溶かしたものを、金型に流し込んだ後に、冷やして固めます。
射出成形に使用する樹脂
射出成形は一般的に、加熱すると液体化する「熱可塑性樹脂」を使用します。一方で、加熱することで固体化する樹脂は「熱硬化性樹脂」とよばれ、射出成形でも使われることがまれにあります。
熱可塑性樹脂にはPET、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂があります。複雑な形状のものを作成しやすく、さらにバリが出にくい点が特徴です。
射出成形機の構造
射出成形機は大きく分けて、「射出装置」「型締め装置」の2つで構成されています。
「射出」とは射出装置で溶かしたプラスチックを金型へ押し出すことです。「型締め」とは
金型が開かないように締め付ける動作のことです。成形する時には大きな圧力が金型に掛かります。型締め装置を用いることで、型を締めて射出の圧力に耐えられるようにします。
射出成形機の種類
射出成形機は「油圧式」「電動式」「ハイブリット式」の3つに分類ができます。
(1)油圧式
油圧ポンプを電動モーターで駆動させて、供給される作動油の油圧により型締めや射出を行います。作動油とは油圧装置の内部にある動力を伝達するための液体です。
高圧な型締め力を実現できて、構造がシンプルなため、メンテナンスが容易な点がメリットです。
(2)電動式
電動式ではサーボモーターを駆動させて、型締めや射出を行います。サーボモーターを採用することで、油圧式よりも消費電力を抑えられます。
さらに、コンピュータを用いてサーボモーターの制御を行うため、精度の高い動作を実現可能です。
(3)ハイブリッド式
油圧式と電動式を組み合わせたハイブリッドタイプの射出成形機です。型締めの際は、大きなエネルギーを必要とする部分は油圧式を採用し、射出では、高精度の速度制御が可能な電動式を採用します。
射出成形で製品が完成するまで
完成品が作られるまでの過程は以下のとおりです。
(1)融解
プラスチック原料の融解は、ヒーターによりスクリューとシリンダが加熱されます。ペレットと呼ばれる粒状のプラスチック材料が溶けて、スクリューが回転することで先端へ送られます。
(2)型締め
型締めは、金型を型締め装置で締め付けて固定されます。スクリューとシリンダーの先に装着されているノズルの先端部分を、金型の入り口の穴に押し付けます。ノズルの先端と穴の接触部分から、プラスチックが漏れ出さないように強く押し付けられます。
(3)射出
スクリューを前に押し出して、溶融プラスチックを金型の中へ流し込みます。流れた溶融プラスチックが逆流しないように、「保圧」という一定の圧力をゲートに加えます。
ゲートとは金型内にあるプラスチック材の通り道で、プラスチックの流入速度を制御する場所です。
(4)冷却
金型の中のプラスチックが冷えるまで待ちます。この時、次の成形を行うためにスクリューを回転させて、プラスチックを溶かして溜めておく準備をします。これを「可塑化」といいます。
(5)型開き
成形品が冷えて固化したら、金型を開きます。
(6)完成品取り出し
金型から完成品を取り出すために、エンジェクターピンとよばれる突き出し装置で、完成品を押し出します。
射出成形のメリット・デメリット
射出成形には以下のメリット・デメリットがあります。
射出成形のメリット
・大量生産が可能で、製造コストを抑えることができる
1度金型を製作してしまえば、どんな複雑な形状のものでも、大量生産できます。そのため、製造コストを抑えることにつながります。
・さまざまなサイズと複雑な形状のものを成形できる
どんなサイズや形のものでも、射出成形で実現可能です。
例えば、大型のものは、お風呂の椅子や炊飯器のカバー、小型のものは、ドライバーのハンドル部分などがあります。
・求める機能や特性に合わせて材質を調整できる
射出成形にはいくつか種類があり、そのひとつの多材質射出成形では、2種類のプラスチック材料を、別々のシリンダーから射出することで2色の成形品を作ることができます。適用例としては、パソコンのキー、車のエアコン操作キー、歯ブラシなどがあります。
射出成形のデメリット
・抜き勾配を付ける必要がある
「抜き勾配」といわれる製品にあらかじめ緩やかな勾配を付けておくことで、完成品を金型から取り外しを容易に行うことができます。
注意したいのは、抜き勾配が小さいことで、完成品に「バリ」「かじり」「変形」が生じる恐れがあることです。不良品を発生させないためには、設計段階で抜き勾配の大きさを検討する必要があります。
・サイズの制約が部分的に発生する
極端にサイズの大きいものや厚みがあるものは、金型成形時の冷却が上手くいかず。成形品内部に欠陥が生じやすくなるため、成形が難しいとされています。
・金型の製作にコストと時間が掛かる
金型を製作するためには一定の製作期間を設ける必要があり、さらに精度が要求されるため、高いコストが掛かります。その観点から、少量多品種のものを作りたい場合には射出成形は不向きといえます。