【用語】鉄鋼用語集(2)熱処理一般2
用語 | 意味 | 英語表記(参考) |
鋳鉄の成長 | 鋳鉄がA1点の上下の温度に加熱・冷却が繰り返されたときに起こる不可逆的な異常膨張現象。 | growth of cast iron |
変態 | 温度を上昇または下降させた場合などに、ある結晶構造から他の結晶構造に変化する現象。 | transformation |
変態点、変態温度 |
温度を上昇または下降させた場合に変態が起こる温度。 鉄鋼には次のような記号を用いる。 なお、下付き文字cをつけた場合は加熱のとき、rをつけた場合は冷却のとき、またeをつけた場合は平衡の変態点を表す。 A0点:鉄鋼中のセメンタイトの磁気変態点 A1点:オーステナイト⇄フェライト+セメンタイトの共析変態点 A2点:α鉄の磁気変態点 A3点:α鉄⇄γ鉄の変態点 A4点:γ鉄⇄δ鉄の変態点 A3線:オーステナイトに対するフェライトの溶解度線。 フェライトと平衡するオーステナイトの炭素濃度を示す線でもある。 Acm線:オーステナイトに対するセメンタイトの溶解度線。 セメンタイトと平衡するオーステナイトの炭素濃度を示す線でもある。 Ac1点:加熱に際し、フェライト+セメンタイトからオーステナイトへの変態が開始する温度。 Ac3点:加熱に際し、純鉄ではα鉄からγ鉄への変態が開始する温度、また亜共析鋼ではフェライトからオーステナイトへの変態が完了する温度。 Ac4点:加熱に際し、純鉄ではγ鉄かδ鉄への変態が開始する温度、また包析点より炭素濃度の低い鋼ではオーステナイトからδフェライトへの変態が完了する温度。 Accm点:過共析鋼において、加熱の際、オーステナイトへのセメンタイトの固溶が完了する温度。 Ar1点:冷却に際し、オーステナイトからフェライト+セメンタイトへの共析変態が開始する温度。 Ar3点:冷却に際し、γ鉄からα鉄へ、又はオーステナイトからフェライトへの変態が開始する温度。 Ar4点:冷却に際し、δ鉄からγ鉄へ、又はδフェライトからオーステナイトへの変態が開始する温度。 Ae1点、Ae3点、Ae4点、Aecm点:平衡状態における上記の各変態温度。 Ar’点:冷却に際し、Ar1点よりある程度低い温度まで過冷されたオーステナイトからフェライト+セメンタイトへの変態が開始する温度。 Ms点:オーステナイトからマルテンサイトへの変態が開始する温度。 冷却速度にはほとんど無関係で、オーステナイトへの化学組成によって定まる一定温度である。Ar”点ともいう。 Mf点:オーステナイトからマルテンサイトへの変態が終了する温度。 Mf点では必ずしもオーステナイトが全く消失するとは限らない。 |
transformation point. transformation temparature |
磁気変態 | 強磁性体から常磁性体へ、又は常磁性体から強磁性体への変化。結晶構造の変化は伴わない。 | magnetic transformation |
α鉄 | A点以下の温度で安定な体心立方晶の純鉄 | α iron |
δ鉄 | A点以上から融点までの温度範囲で安定な体心立方晶の純鉄 | δ iron |
フェライト |
α鉄固溶体及びδ鉄固溶体につけた組織上の名称。 δ鉄の固溶体をδフェライトともいう。 |
ferrite |
初析フェライト | 亜共析鋼を高温から冷却する際に、共析変態に先立ってオーステナイトから析出するフェライト。 | pro-eutectoid ferrite |
シリコ・フェライト | ねずみ鋳鉄及び可鍛鋳鉄のように多量のけい素を含むフェライト。 | silico-ferrite |
γ鉄 | γ鉄の固溶体につけた組織上の名称。 | γ iron |
オーステナイト | γ鉄の固溶体につけた組織上の名称。 | austenite |
固溶体 | 一つの個体に外の元素が均一に溶け込んで生じた単一の個体。 | solid solution |
共晶 |
冷却の過程で、一つの融液から2つ以上の固相が密に混合した組織への変化、又はその反応で生じた組織。 平衡状態図で、共晶成分より合金元素濃度が少ないときには亜共晶(hypo-eutectic)、多いときには過共晶(hyper-eutectic)という。 |
eutectic |
共析 |
冷却の過程で、一つの融液から2つ以上の固相が密に混合した組織への変態、又はその変態で生じた組織。 平衡状態図で、共析成分より合金元素濃度が少ないときには亜共析(hypo-eutectoid)、多いときには過共析(hyper-eutectoid)という。 |
eutectoid |
析出 | 固溶体から異相の結晶が分離成長する現象。 | precipitation |
偏析 | 合金元素や不純物が不均等に偏在している現象、又はその状態。 | segregation |
しま状組織 | 圧延又は鍛伸方向に並行に並んだ偏析組織。 | banded structure |
炭化物 |
炭素と一つ又はそれ以上の金属元素との化合物。 特に二つ以上の金属元素を必要成分とするものを複炭化物(double carbide)という。 |
carbide |
セメンタイト | 鉄と炭素の化合物で、化学式は近似的にFe3Cで示される炭化物。 | cementite |
初析セメンタイト | 過共析鋼を高温から冷却する際に、共析変態に先立ってオーステナイトから析出するセメンタイト。 | pro-eutectoid cementite |
パーライト |
オーステナイトの冷却に際し、共析変態で生じたフェライトとセメンタイトの層状組織。 冷却速度の大乗によって層状組織に疎密を生じる。光学顕微鏡で識別が困難なほど密な場合は、微細パーライト(fine pearlite)という。 |
pearlite |
結晶粒度 |
多結晶材における結晶粒の大きさ。 一般にはこれを比較法又は切断法によって求めた粒度番号で表す。 オーステナイト結晶粒度の試験方法はJIS G 0551(鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法)に、またフェライト結晶粒度の試験方法はJIS G 0552(鋼のフェライト結晶粒度試験方法)に規定している。 |
grain size |
ウイドマンステッテン組織 | 元のオーステナイト結晶粒の特定の結晶面に沿った幾何学的模様を露呈する冷却変態組織 | Widmannstätten structure |
双晶 |
一つの結晶粒の中で、結晶格子の構造は同じであるが、ある一定の麺(双晶面という。)を境界にして、互いに鏡面対称となっているような結晶。 一般の金属に見られる双晶の種類としては、変形双晶(deformation twin)、変態双晶(transformation twin)及び焼なまし双晶(annealing twin)がある。 |
twin |
焼なまし双晶 | 焼なましして再結晶や結晶粒成長が起こるときにしばしば現れる双晶。 | annealing twin |
共晶黒鉛 | 共晶状の微細な片状黒鉛、又は可鍛鋳鉄の焼なまし以前に既に白鋳鉄(白銑)中に存在する黒鉛。後者をモットル(mottle)ともいう。 | eutectic graphite |
片状黒鉛 |
ねずみ鋳鉄中に生じる片状の黒鉛。 ばら状黒鉛(graphite rosette)、共晶黒鉛(eutectic graphite)もこれに含まれる。 |
graphite flake, flake graphite |
球状黒鉛 | マグネシウムなどで処理して製造した球状黒鉛鋳鉄に生じる緻密な球状の黒鉛。 | spheroidal graphite, nodular graphite |
白鋳鉄、白銑 | 共晶セメンタイトとパーライトからなり、黒鉛を含まない銑鉄。 | white iron |
バーミキュラ黒鉛 |
球状黒鉛と片状黒鉛との中間的な芋虫状の黒鉛。 コンパクト黒鉛ともいう。 |
virmicular graphite, compacted graphite |
※双葉電子工業株式会社 プレート総合カタログ 設備用規格編 レッドブック<設備編>から抜粋