【用語】鉄鋼用語集(3)焼ならし及び焼なまし
用語 | 意味 | 英語表記(参考) |
焼ならし |
Ac3点又はAccm点以上の適当な温度に加熱した後、通常は空気中で冷却する操作。 その目的は、前加工の影響を除去し、結晶粒を微細化して、機械的性質を改善することである。鉄鋼の焼ならし加工は、JIS B 6911(鉄鋼の焼ならし及び焼なまし加工)に規定している。 |
normalizing |
焼なまし |
適当な温度に加熱し、その温度に保持した後、徐冷する操作。 その目的は、残留応力の除去、硬さの低下、被削性の向上、冷間加工性の改善、結晶組織の調整、所要の機械的、物理的又はその他の性質を得ることなどである。鉄鋼の焼なまし加工は、JIS B 6911に規定している。 |
annealing |
完全焼なまし | A3点(亜共析鋼)又は、A1点(過共析鋼)以上の温度に加熱し、その温度に十分な時間、保持した後、ごく徐々に冷却してこれを軟化する焼なまし。 | full annealing |
軟化焼なまし | 硬さを一様に低下させ、後の塑性加工又は切削加工を容易にするために、A1点の上又は下の温度に加熱して行う焼なまし。 | softening |
応力除去焼なまし | 鉄鋼を変態点以下の適当な温度に加熱保持して、鍛造、鋳造、機械加工、溶接などで生じた残留応力を除去する焼なまし。 | stress relieving |
ひずみ取り焼なまし | 鋼材又は鋳物に生じたひずみを除去するために、荷重をかけながら変態点以下の温度に加熱保持して行う焼なまし。 | straightening annealing, strain relieving annealing |
低温焼なまし | 残留応力の低減又は軟化を目的として、変態点以下で行う焼なまし。再結晶温度以下で行う場合もある。 | low temperature annealing |
拡散焼なまし | 鋼を拡散によって均質化するため、A3点又はAcm点以上の適当な温度に加熱して行う焼なまし。 | homogenizing, diffusion annealing |
球状化焼なまし | 冷間加工後、被削性又は機械的性質を改善する目的で、鉄鋼中の炭化物を球状化する焼なまし。 | spheroidizing |
等温焼なまし |
A3点(亜共析鋼)又はA1点(過共析鋼)以上の温度に加熱した後、A1点以下の比較的急速にパーライト変態の進む温度まで急冷し、その温度に保持してオーステナイトをフェライトと炭化物とに変態させ、比較的短時間に軟化する焼なまし。 サイクルアニーリング(cycle annealing)ともいう。 |
isothermal annealing |
中間焼なまし |
冷間加工で硬化した鋼を軟化し、引き続いて行う冷間加工を容易にする目的で、再結晶温度以上A1点以下の適当な温度で行う焼なまし。 又は鍛鋼品の製造工程中、最終熱処理の前に1回ないし数回に分けて行う焼なまし。 インタミディエイトアニーリング(intermediate annealing)ともいう。 |
process annealing |
箱焼なまし | 焼なましの際の表面酸化を防ぐために、鉄鋼を密閉した容器中に入れて行う焼なまし。 | box annealing, pot annealing |
可鍛化焼なまし | 白鋳鉄(白銑)の化合炭素の全部又は一部を、長時間の加熱によって黒鉛化し、又は表面から脱炭させて、粘りがある鋳鉄を得るために行う焼なまし。 | malleablizing |
黒鉛化焼なまし | 鉄鋼の化合炭素の全部又は一部を黒鉛に変化させるために行う焼なまし。 | graphitizing |
第一段焼なまし | 第一段黒鉛化のための焼なまし | first stage annealing |
第二段焼なまし | 第二段黒鉛化のための焼なまし | second stage annealing |
予備焼なまし | 白鋳鉄(白銑)の黒鉛化を促進するため、あらかじめA1点以下の適当な温度で行う焼なまし。 | pre-baking, pre-annealing |
脱炭焼なまし | 鉄鋼の表面から炭素を除去して延性を与えるための焼なまし | decarburizing annealing |
黒鉛化 |
セメンタイトが高温で分解して、セメンタイト中の炭素が黒鉛に変化する現象。 黒鉛化には、第一段黒鉛化、直接黒鉛化及び第二段黒鉛化がある。 |
graphitization |
第一段黒鉛化 | 可鍛鋳鉄を製造する際、共晶セメンタイトが焼戻炭素(テンパーカーボン)とオーステナイトへ分解する現象。 | first stage graphitization |
直接黒鉛化 | 第一段黒鉛化終了後の冷却過程において、A1変態の温度範囲内でオーステナイトがフェライトに変態する際、その炭素溶解度の差によってオーステナイトから直接黒鉛が析出する現象。 | direct graphitization |
第二段黒鉛化 | 可鍛鋳鉄を製造する際、共析セメンタイトが焼戻し炭素(テンパーカーボン)とフェライトへ分解する現象。 | second stage graphitization |
回復 | 冷間の塑性変形による影響が焼なましによって除去されるときの第一段階で、再結晶に先立って起こる現象。 | recovery |
球状炭化物 | 球状となった炭化物。 | globular carbide, spheroidal carbide |
球状セメンタイト | 球状となったセメンタイト | globular cementite, spheroidal cementite |
焼戻炭素 | 白鋳鉄(白銑)の黒鉛化焼なましによって析出した黒鉛 | temper carbon |
※双葉電子工業株式会社 プレート総合カタログ 設備用規格編 レッドブック<設備編>から抜粋