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【用語】鉄鋼用語集(3)焼入れ、焼戻しおよび時効 1

用語 意味 英語表記(参考)
焼入れ

オーステナイト化温度から急冷して硬化させる操作。

必ずしも硬化を目的とせず、単に急速に冷却する操作をいうこともある。

なお、オーステナイト状態で圧延を行い、その後、圧延ライン上で直ちに行う焼入れもこれに含み、これを圧延後直接焼入ということがある。

quench hardening, quenching
水焼入れ 冷却に水を用いて行う焼入れ。 water hardening, water quenching
油焼入れ 冷却に油を用いて行う焼入れ。 oil hardening, oil quenching
熱浴焼入れ 冷却に適当な温度に保った熱浴(溶融金属、溶融塩、油など)を用い、この熱浴で急冷し適当な時間保持した後、引き上げて空冷する焼入れ。 hot bath quenching
塩浴焼入れ 溶融塩を用いる熱浴焼入れ。 salt bath quenching
電解焼入れ 電解液中で陰極とした処理物と陽極との間で通電して処理物を加熱し、電解液によって急冷する焼入れ。 electrolytic hardening
真空焼入れ 真空中で加熱し、ガス、油又は水などによって急冷する焼入れ。 vacuum hardening
空気焼入れ

空気中又は適当なガス雰囲気中で冷却する焼入れ。

自硬性をもつ鋼を焼入れする場合に行われる。

air hardening
噴射焼入れ 冷却剤を噴射して行う焼入れ。 spray hardening
噴霧焼入れ 霧状の冷却液中で行う焼入れ。 fog hardening
中断焼入れ、階段焼入れ フェライト及びパーライト生成温度以下に急冷し、マルテンサイト生成温度より高い温度にある間に冷却剤から引き上げ、そのまま大気中に放冷するか又は適当な媒剤中で冷却する操作。 interrupted quenching
時間焼入れ 冷却剤中で急冷して適当な時間保持した後、引き上げる方法による中断焼入れ。 time quenching
プレスクエンチ

プレスした状態で行う焼入れ。

焼入変形を極度に嫌う機械部品に応用され、ダイクエンチ(die quenching)ともいう。

press quenching
部分焼入れ 部品の各部に所要の性質を与えるために、局部的に行う焼入れ。 selective hardening
ベイナイト焼入れ ベイナイト組織を得るような焼入れ。 bainitic hardening
スラッククエンチ

オーステナイト化温度から臨界冷却速度よりやや遅い速度で冷却して行う焼入れ。

この場合、鋼は完全に硬化せず、マルテンサイトのほかに、又は、マルテンサイトに代わって、一種又はそれ以上の変態生成物を生じる。

slack quenching
鍛造焼入れ

オーステナイト状態で鍛造を施し、そのまま直ちに行う焼入れ。

鍛造安定オーステナイト状態で行うものと、準安定オーステナイト状態で行うものとの2種類がある。

direct quenching from forging temperature
マルテンパ

マルテンサイト生成温度域の上部又はそれよりやや高い温度に保持した冷却剤中に焼入れして、各部が一様にその温度になるまで保持した後、徐冷する操作。

その目的は、焼入れによるひずみの発生や焼割れを防ぐとともに、適当な焼入れ組織を得ることである。マルクエンチ(marquenching)ともいう。

martempering
サブゼロ処理

0℃以下の低温度に冷却する操作。

焼入れした鋼に、この処理を適用する場合の目的は、残留オーステナイトのマルテンサイトへの変態を進行させて、部品の経年変形を防ぐことなどである。深冷処理ともいう。

subzero treatment
オーステンパ

Ac3点又はAc1点以上の適当な温度に加熱して、安定なオーステナイト組織としたものを、変態を阻止してそのままフェライト及びパーライト生成温度以下、マルテンサイト生成温度以上の適当な温度範囲に保持した冷却剤中に急冷し、その温度でベイナイトに変態させた後、室温まで適当に冷却する操作。

その目的は、ひずみの発生及び焼割れを防止するとともに、強じん性を与えることである。

austempering
パテンチング

中炭素鋼又は高炭素鋼の線材もしくは鋼線をオーステナイト状態から適当な冷却媒体で、Ar点以下の適当な温度に急冷保持する操作。

冷却媒体としては溶融鉛、溶融塩、衝風、流動層、沸騰水などが用いられる。

その目的は、冷間加工性がよく加工後の性質も優れた微細パーライトを得ることである。

patenting
オイルテンパ処理 鋼線を連続的に真っすぐな状態で、油焼入焼戻しを施す処理。 oil quenching(hardening) and tempering
焼戻し

焼入れで生じた組織を、変態又は析出を進行させて安定な組織に近づけ、所要の性質及び状態を与えるために、A1点以下の適当な温度に加熱、冷却する操作。

焼ならしの後に用いることもある。

tempering
繰返し焼戻し 高合金鋼、高速度工具鋼などのように1回の焼戻しで効果が十分上がらない場合に、焼戻しを2~3回繰り返す操作。 multiple tempering
調質 焼入れ後、比較的高い温度(約400℃以上)に焼戻して、トルースタイト又はソルバイト組織にする操作。 thermal refining
時効

急冷、冷間加工などの後、時間の経過に伴い鋼の性質(例えば硬さなど)が変化する現象。

時効硬化を目的として行う操作の意味で用いることもある。焼入時効、ひずみ時効などがある。

また、室温において起こる時効を自然時効(natural ageing)、室温以上の適当な温度で加熱したときに起こる時効を人工時効(artificial ageing)という。

ageing
焼入時効 高温から急冷した鉄鋼を室温又はそれより少し高い温度に保持したときに起こる時効。 quench ageing
ひずみ時効 冷間加工した材料に起こる時効。 strain ageing
過時効 硬さ、強さなどの性質が最高になる温度と時間より高い温度又は長い時間で起こる時効。 overageing
固溶化熱処理 鋼の合金成分を固溶体に溶解する温度以上に加熱して十分な時間保持し、急冷してその析出を阻止する操作。 solution treatment
過冷 変態や析出の一部又は全部を阻止して、変態点以下又は溶解度線以下の温度に冷却する操作。 supercooling
水靭 高マンガン鋼などを固溶化温度から水中急冷して完全なオーステナイト組織を得る操作。 water toughening
鋭敏化熱処理 オーステナイト計ステンレス鋼の粒界腐食試験を行うために、500~800℃の温度範囲に加熱して、粒界腐食に敏感な組織状態にする熱処理。 sensitization
オースエージ

過冷オーステナイトをMs点以上の温度で時効する処理。

例えば、ある種の析出硬化系ステンレス鋼(SUS 631など)に対し、Ms点の調整などの目的で行う。

ausaging
マルエージ 極低炭素合金マルテンサイトを時効によって硬化させる操作。 marageing
ブルーイング

鋼の外観及び耐食性を改善するために、適当な温度の空気、水蒸気又は化学薬品にさらして、その表面に鉄の酸化物皮膜を生じさせる操作。又は冷間加工による鋼線や冷間成形後のばねなどの残留内部応力を減少させ、弾性を高めるなどの目的で行う低温加熱。

表面は、加熱温度によって黄色又は青色に変化する。

blueing
焼入性

鉄鋼を焼入硬化させた場合の焼きの入りやすさ、すなわち、焼きの入る深さと硬さの分布を支配する性能。

焼入性は、通常、焼きの入る深さの大小で比較するが、それには焼入性試験方法〔JIS G 0561[鋼の焼入性試験方法(一端焼入方法)]〕を用いると便利である。

hardenability
焼入性バンド

同一鋼種の化学成分及び結晶粒度のばらつきによる焼入性曲線のばらつきの範囲をバンドで表したもの。

Hバンド(H band)ともいう。

Hバンドが定められた鋼をH鋼という。

hardenability band
焼入性倍数

合金元素を添加したときの理想臨界直径と、添加しないときの理想臨界直径との比。

焼入性倍数は、一般に合金元素の添加量と共に増加する。

multiplying factor
質量効果

質量及び断面寸法の大小で、焼入れ硬化層深さの異なる度合。

質量及び断面寸法のわずかな変化で、焼入硬化層深さが大きく変化することを、質量効果が大きいという。

mass effect
自硬性 焼入温度から空気中で冷却する程度でも、容易にマルテンサイトを生じて硬化する性質。 property of self hardening
冷却能

焼入れに用いる冷却剤の冷却能力。

H(severity of quenching)の値で表すことがある。

cooling power

※双葉電子工業株式会社 プレート総合カタログ 設備用規格編 レッドブック<設備編>から抜粋

 

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