【めっき】無電解ニッケルめっき
無電解ニッケルめっき(Ni-P)とは
無電解ニッケルめっきとは、名前の通り電気を使わないニッケルめっきのことをいいます。
めっきは一般的に電気を使用して皮膜をを素材表面に析出させる電気めっきを言うことが多いですが、無電解ニッケルめっきでは、イオン化したニッケルと還元剤を溶解させためっき浴中に被めっき素材を浸漬させ化学反応を起こすことによって、イオン化したニッケルが金属として還元されめっき皮膜を析出されます。
よく聞く別名称として、カニゼンめっきという名称が使われています。無電解ニッケルめっきが国内で最初に広まったのが日本カニゼン株式会社の無電解ニッケルめっきだったことに由来します。
特徴
無電解ニッケルめっきは、電気を流さず化学反応で皮膜を折出させるため、形状を問わず、複雑な形の製品にも均一にめっきを施すことが可能で、精度が必要な機械部品や金型などに多く使用されています。
一方、電解ニッケルめっきはニッケルをイオン化させためっき浴中にニッケル金属を陽極とし、陰極として浸漬させた被めっき素材に外部電源から両極に電流を流すことによって、陰極側(被めっき素材)にイオン化させたニッケルが金属のめっき皮膜として析出されます。
また、形状により電流の密度の違いからめっき厚にばらつきが出てしまいます。
コストに関しては、電気ニッケルめっきに比べてめっき析出速度が遅く、材料費も高いため、無電解ニッケルめっきが高価になります。
その他の特徴として、触媒付与により樹脂、セラミックス等の不導体にもメッキが可能です。
用途
・自動車、航空、船舶関連、化学工業、電子機器、真空装置、半導体製造装置、精密機器、工作機械
皮膜の種類
めっき皮膜中にはニッケルの他に、リン(P)が含有することが一般的で、リンの含有率によって低リンタイプ、中リンタイプ、高リンタイプに分類され性質が異なります。
タイプ | リン含有率(wt%) | 物性 |
低リンタイプ | 1~4 | 硬度が高く(700Hv)、耐摩耗性に優れますが耐食性がやや劣ります。 |
中リンタイプ | 5~9 | 一般的に広く使用されていて、他の無電解ニッケルめっきと比較して耐食性、耐摩耗性やはんだ付け性等、平均的な値を示します。 |
高リンタイプ | 10~13 | 耐食性に優れますがはんだ濡れ性がおとります。 |
無電解ニッケルめっき(Ni-p)皮膜の特性
特性 | 含有率による違い |
耐食性 | 高リンタイプ<中リンタイプ<低リンタイプ |
耐摩耗性 |
析出状態 低リンタイプ(700Hv)<中リンタイプ(550Hv)<高リンタイプ(500Hv) 熱処理後 低リンタイプ(950Hv)=中リンタイプ(950Hv)=高リンタイプ(950Hv) |
はんだ濡れ性 | 低リンタイプ<中リンタイプ<高リンタイプ |
耐酸性 | 低リンタイプ<中リンタイプ<高リンタイプ |
耐アルカリ性 | 高リンタイプ<中リンタイプ<低リンタイプ |
化学成分
単位%
化学成分 | ||
Ni | p | その他成分 |
83~98 | 2~15 | 0~2 |
JIS8645:1999より抜粋