【めっき】ニッケルめっき(電解ニッケルめっき)
ニッケルめっき(電解ニッケルめっき)とは
ニッケルめっきは、ニッケル金属化合物を利用して、金属やその他の材料の表面にコーティングをする技術です。ニッケルめっきは高耐食性と外観の美しさから表層めっきとして、また密着性の良さから下地めっきとしてなど幅広い分野で使用されています。
ニッケルめっきの特徴
ニッケルめっきはその優れた特性を生かして、自動車部品、家電製品、工業部品、装飾品など産業分野で広く利用されています。
具体的な効果としては下記のようなものがあります。
1. 耐腐食性: 金属表面に薄いニッケル層を形成し、錆や腐食から保護する
2. 耐摩耗性: 表面を硬くし、摩耗に対する耐性を向上させる
3. 美観向上: 金属表面に光沢を与え、美しい仕上がりを実現する
4. 接着性向上: 接着剤との結合を強化し、接着性を向上させる
ニッケルめっきの種類
ニッケルめっきの主な種類としては、電解ニッケルめっきと無電解ニッケルめっきがあります。
無電解ニッケルめっきは、電気を流さず化学反応で皮膜を折出させるため、形状を問わず、複雑な形の製品にも均一にめっきを施すことが可能で、精度が必要な機械部品や金型などに多く使用されています。無電解ニッケルめっきの詳細については、技術情報:表面処理【めっき】無電解ニッケルめっき(※1)をご参照ください。
一方、電解ニッケルめっきはニッケルをイオン化させためっき浴中にニッケル金属を陽極とし、陰極として浸漬させた被めっき素材に外部電源から両極に電流を流すことによって、陰極側(被めっき素材)にイオン化させたニッケルが金属のめっき皮膜として析出されます。
また、形状により電流の密度の違いからめっき厚にばらつきが出てしまいます。
コストに関しては、電解ニッケルめっきに比べてめっき析出速度が遅く、材料費も高いため、無電解ニッケルめっきの方が高価になります。
その他の特徴として、触媒付与により樹脂、セラミックス等の不導体にもメッキが可能です
電解ニッケルめっきと無電解ニッケルめっきの違いについては下図の通りです。
種類 |
電解ニッケルめっき | 無電解ニッケルめっき |
めっきの方法 |
電流を使用してめっき膜を形成 |
薬品による化学反応を利用してめっき膜を形成 |
長所 |
・高い光沢性 ・膜厚のコントロール可能 |
・複雑な形状や内部にも均一にめっきが施せる |
短所 |
・複雑な形状や内部のめっきには向かないことが多い |
・膜厚を非常に厚くするのは難しい場合がある |
主な用途 |
・装飾品(ジュエリー、時計など) ・自動車部品(バンパー、ホイールなど) ・家電製品(冷蔵庫のハンドル、洗濯機のドラムなど) |
・電子機器(プリント基板など) ・医療機器(手術器具など) ・半導体製造装置(エッチング装置など) |
コスト |
大量生産に向いており比較的コストが低い |
比較的高価 |
電解ニッケルめっきについて
電解ニッケルめっきには、光沢ニッケルめっき、半光沢ニッケルめっき、無光沢ニッケルめっきの3種類があり、その特性から様々な製品に使用されています。
光沢ニッケルめっき
光沢ニッケルめっきは、その名前の通り、非常に高い光沢を持つめっきです。このめっきは、表面が非常に滑らかで鏡面のような仕上がりになるため、装飾目的や外観が重要視される製品に使用されることが多いです。例えば、家電製品の外装部品や自動車の装飾部品などに広く利用されています。また、美しい外観だけでなく、耐腐食性や耐摩耗性も優れているため、機能性と美観を兼ね備えた高級感のある仕上がりが求められる用途に適しています。
半光沢ニッケルめっき
半光沢ニッケルめっきは、光沢ニッケルめっきほどの強い光沢は持ちませんが、適度な光沢を持ち、滑らかな仕上がりになります。このため、実用性と装飾性のバランスが取れており、機械部品や工具、産業機器など、多岐にわたる用途で使用されます。適度な耐腐食性と耐摩耗性を持ち、見た目の美しさも保ちながら、実用的な性能を発揮します。
無光沢ニッケルめっき
無光沢ニッケルめっきは、光沢をほとんど持たないマットな仕上がりです。このタイプのめっきは、特に耐腐食性と耐摩耗性が非常に高く、工業用部品や機械部品などの過酷な環境で使用されることが多いです。無光沢ニッケルめっきは、光沢の必要がない用途や、機能性が最優先される場面で選ばれることが多いです。
それぞれの特徴と用途等については下図の通りです。
特性 |
光沢ニッケルめっき | 半光沢ニッケルめっき | 無光沢ニッケルめっき |
外観 |
光沢性が高く、鏡面仕上げ、反射性が高い | 適度な光沢、滑らかな仕上 | マット仕上げ、光沢なし |
よく使用される材質 |
鉄、アルミニウム、銅、ステンレス | 鉄、アルミニウム、銅、ステンレス | 鉄、アルミニウム、銅、ステンレス |
被膜の厚さ(μm) |
1 – 20 | ||
効果 |
耐腐食性、美観、耐摩耗性 | 適度な耐腐食性、耐摩耗性、美観 |
高い耐腐食性、耐摩耗性 |
使用される製品等 |
装飾品、家電製品、自動車外装部品 | 機械部品、工具、産業機器 |
工業用部品、機械部品、構造材 |
コスト |
中程度~高い | 中程度 |
中程度~低い |
電解ニッケルめっきの処理の工程
被めっき素材をニッケルイオンを含む溶液に浸し電流を流すと、イオン化させたニッケルが素材にめっき被膜として析出されます。
この電解ニッケル処理の工程は下図のようになります。
電解ニッケルめっきは、その優れた特性と多様な用途により、多くの産業で重要な役割を果たしています。耐腐食性、耐摩耗性、美観の向上など、多くの利点を持つ電解ニッケルめっきは、製品の品質と寿命を高めるために欠かせない技術です。
※1 技術情報:表面処理【めっき】無電解ニッケルめっき