【めっき】リン酸塩処理
リン酸塩処理(パーカライジング)(リューブライト)とは
リン酸塩処理(パーカライジング、リューブライト)は、金属表面に薄い皮膜を生成する化成処理のひとつです。主に鉄系の材料に使用され、高耐食性の皮膜が腐食を防ぎ、塗装前の下地処理として塗膜の密着性を高めます。「パーカライジング」は技術を開発したパーカー・アミコ社に由来し、「リューブライト」はリン酸マンガン処理を指し、リューブライト社が開発したことからこのように呼ばれます。
リン酸塩処理の特徴
リン酸塩処理の長所
1.耐食性が高い
金属表面に形成されるリン酸塩皮膜は、酸やアルカリに対する耐性があり、長期的な保護が可能です。
2.塗装の密着性が高い
微細な孔を持つ皮膜によって、塗料やコーティング剤が浸透しやすく、塗装の剥離を防ぎます。
3.潤滑性の向上
金属表面に潤滑性の高い皮膜を形成し、加工時の摩擦を減少させます。そのため、自動車のギアやシャフト、建設機械のシリンダーやピストンなどの摺動部品の潤滑被膜としても利用されます。
リン酸塩処理の短所
1.表面の見た目
リン酸塩皮膜のマットな灰色や黒色の皮膜は、見た目の滑らかさや光沢を損なうことがあります。
2.処理プロセスの煩雑さ
コーティングの品質(皮膜の性能や厚み等)を保つためには、温度、濃度、浸漬時間、溶液の組成などを適切に制御する必要があり、その管理が難しい場合があります。
3.処理ができない金属がある
リン酸塩処理は主に鉄や鋼などの鉄系材料に対して開発された技術であることから、非鉄金属(アルミニウム、銅、真鍮など)やステンレス鋼、ニッケルなどには使えません。
リン酸塩処理の種類
リン酸塩の処理は、鉄系の材料の表面にリン酸塩の皮膜を作ることで、耐食性、塗装の密着性、潤滑性を向上させる重要な表面処理技術です。用途や目的に応じて、適切な種類のリン酸塩の処理を選択することが重要です。
リン酸塩処理の種類と特徴
特性 |
リン酸亜鉛処理 | リン酸鉄処理 | リン酸カルシウム処理 | リン酸マンガン処理 |
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めっき方法 |
浸漬法、スプレー法 | 浸漬法、スプレー法 | 浸漬法、スプレー法 | 浸漬法、スプレー法 |
硬度 | 高い | 低い | 高い | 高い |
長所 | 耐食性と密着性が高い | 非常に薄い膜で美観に優れる | 耐熱性が高い | 厚い被膜で潤滑性が高い |
短所 | 美観は劣る | 耐食性は中程度 | 処理温度が高い | 美観は劣る 処理温度が高い |
主な用途 | 塗装下地、耐食性を高める |
見た目の美しさが求められる用途、塗装下地 |
高い温度での焼付塗装の下地 | 摩擦を減少させるための保護膜、耐摩耗性の向上 |
コスト | 中程度 | 低い | 中程度 | 高い |
リン酸塩処理の工程
リン酸塩の処理工程では、まず金属表面の油分や汚れ、さびなどを取り除く前処理が重要です。次に、処理液の濃度と温度(35~90℃)を管理し、適切な反応を促します。処理後は十分にすすぎ、残留薬品が皮膜に悪影響を与えないようにし、乾燥を均一に行います。これにより、リン酸塩処理の品質をアップすることができます。
まとめ
リン酸塩処理は、その特性を生かして、自動車部品の塗装下地、建築資材の仕上げ、エンジン部品や高温での焼付塗装の下地、機械部品のギアやピストンの潤滑性と耐摩耗性の向上など、さまざまな分野で利用されています。コストや処理温度を考慮しながら、最適な処理方法を選ぶことが重要です。